始末書を拒否して出さない従業員への対応について

こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
始末書の提出や書き直しを求めても、拒否する従業員への対応でお困りではないでしょうか?
始末書を書かないまま放置すると、社内でも示しがつかず、会社のルールがどんどんルーズになり、会社の指示に従わない従業員が他にも出てくる危険があります。
この記事では、始末書の提出を求めても出さない従業員への対応についてご説明します。
▼【関連動画】西川弁護士が「始末書を拒否して出さない従業員への対応を弁護士が解説【前編】」と「解雇は可能?始末書の提出を拒否する従業員について解説【後編】」を詳しく解説中!
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今回の記事で書かれている要点(目次)
1,そもそも「始末書」とは?2,「始末書」と「顛末書」の違い3,始末書の提出を拒否する従業員への対応4,そもそも始末書の取り方を間違えていないか?5,始末書を拒否する従業員を懲戒解雇できるか?6,まずは解雇ではなく合意による退職を目指す7,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます!」8,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法9,始末書拒否に関連するお役立ち情報も配信中(メルマガ&YouTube)
1,そもそも「始末書」とは?
「始末書」とは、従業員に就業規則違反や業務上の落ち度があったことを謝罪させ、同様のことを繰り返さないことを誓約させる文書です。
就業規則でも、譴責処分や戒告処分・訓告処分、その他の懲戒処分の際に、始末書を従業員に提出させる内容を定めているケースが多くあります。
「弁護士西川暢春のワンポイント解説」
厚生労働省のモデル就業規則では、以下のように、けん責処分の際に、始末書を提出させることが定められています。自社の就業規則ではどうなっているか確認してみてください。
参照:厚生労働省「モデル就業規則」
(懲戒の種類)
第65条 会社は、労働者が次条のいずれかに該当する場合は、その情状に応じ、次の区分により懲戒を行う。
①けん責
始末書を提出させて将来を戒める。
(以下略)
・参照元:厚生労働省「モデル就業規則」はこちら
2,「始末書」と「顛末書」の違い
「顛末書(てんまつしょ)」は、いわゆる報告書であり、なにか問題が起きたときにその経緯等を報告する文書です。「始末書」とは違い、謝罪や反省の意味は含まれません。
3,始末書の提出を拒否する従業員への対応
では、始末書の提出を拒否する従業員についてどのように対応すればよいのでしょうか?
始末書の提出を拒否する従業員に対して、始末書を提出させようと努力することは、実はあまり意味がありません。
始末書の提出を拒否するということは、従業員が会社が出した始末書提出の命令に何らかの意味で反発して、納得していないということを示しています。
そして、始末書は、そもそも本人の謝罪や反省を表明する文書です。
会社の指示に納得せず反省する意思もない場合に、無理やり始末書を出させても意味がありません。
(1)始末書ではなく自分の意見を書かせて記録に残す
従業員に問題行動や重大なミスがあり、会社が始末書の提出を求めたのに対して、それを拒否された場合、従業員に対してなにも処分をしないのでは、示しがつきません。
何らかの処分をする必要があります。
そのためには、まず「始末書を出さないのであれば、今回の件についての自分の意見を書きなさい」と伝えるべきです。
始末書を拒否している従業員に自分の意見を書かせれば、通常は、反省など全くしていない、むしろ会社が悪いというような内容の意見書が提出されます。
会社としては、このような、指導を受けても反省せずに問題行動を続けた場合、そのような態度に対して、懲戒処分や解雇を検討していくことになります。
なお、懲戒処分についての詳しい解説は以下をご覧ください。
懲戒処分や解雇の場面ではその正当性を根拠づけるだけの証拠が必要ですが、始末書の提出を拒否する従業員に自分の意見を書かせて提出させておくことによって、本人が会社の指導に従わず反抗的な態度をとっていることを証拠として明確に残すことが可能です。
4,そもそも始末書の取り方を間違えていないか?
始末書の提出を拒否されるケースの中には、そもそも会社の始末書の書かせ方が適切でないケースもあります。
(1)まず報告書を出させる
何か問題を起こした従業員には、いきなり始末書の提出を求めるのではなく、まずは報告書を出させることをおすすめします。
「報告書」は、始末書と違い、謝罪や反省を示すものではなく、単に起こった事実を従業員に文書で報告させるものです。
始末書を拒否するようなケースでも、報告書であれば提出することが多いです。
そして、報告書を本人に書かせることで、本人が自分が起こした問題についてどのように認識しているのか、反省しているのかどうかという点を会社としても把握することができ、かつ資料としても残すことができます。
(2)始末書の文章は自分で考えさせる
報告書の提出の後、本人に謝罪させて、再発防止を誓約させる必要がある場合は、始末書を提出させます。
ただし、この場合に、会社から始末書の文例を渡してそのとおりに書くように指示するべきではありません。
そもそも始末書は、謝罪、反省の文書ですから、従業員自身の意思で書かせなければ意味がありません。
会社から文例を渡してそのとおりに書かせても、本人が謝罪し、反省していなければ、全く意味がないのです。
始末書の提出を求める場合は、本人自身に文章を考えさせ、記載させる必要があります。
仮に、全く自分は悪くないというような文書が出てくる場合は、問題点を指摘されても指導に従わない態度について、本人直筆の資料を得ることができます。
5,始末書を拒否する従業員を懲戒解雇できるか?
では、始末書を提出を拒否した従業員を解雇できるのでしょうか?
過去の判例の中には、「始末書の提出の強制は個人の意思の尊重という法理念に反する」などとして、始末書の提出拒否に対して会社は懲戒処分をすることができないとした判例も存在します(徳島地方裁判所平成9年6月6日判決)。
しかし、最近の判例では、合理的な理由で始末書の提出を求めたにもかかわらず、拒否して問題行動を続ける態度をとる従業員については、懲戒解雇を正当と判断したものが多くなっています。
なお、懲戒解雇について詳しくは以下の記事を参考にご覧ください。
例えば、以下の判例があります。
事例1:
東京地方裁判所平成23年10月31日判決
事案の概要 配置転換の命令を拒否したことに対し、会社が3回にわたり譴責処分をして始末書の提出を求めたが、始末書の提出を拒否して、配置転換前の部署で業務を継続しようとした従業員を懲戒解雇した事案
裁判所の判断裁判所は懲戒解雇を有効と判断しました。
裁判所の判断の理由裁判所は、従業員が配転命令について従わない意思を表明し、会社が譴責処分によって3回にわたり機会を与えたのに聴き入れようとしなかったという点で、自分の意向に沿わない会社の命令には従わないという明白な志向が現れているとしました。
そのうえで、配転命令に従わず配置転換前の部署での業務を強行したことにより、職場の業務が混乱したことなどを踏まえ、懲戒解雇を有効と判断しています。
また、契約社員の雇止めの事案ですが、以下のような判例もあります。
事例2:
大阪運輸振興株式会社事件大阪地方裁判所平成20年10月31日判決
事案の概要 バス運転手が一部の乗客について乗車拒否をした件について、30日の停職処分を科され、いったんは反省した旨の始末書を作成したが、その後、始末書を無理やり書かされたなどと主張して反省をひるがえす言動をとったことを理由に雇止めした事件
裁判所の判断雇止めは正当であると認めました。
裁判所の判断の理由裁判所は、会社が始末書の提出を求めたことは不当ではなく、従業員が始末書を無理やり書かされたなどと主張して反省をひるがえす言動をとったことからすると、会社が従業員に対する信頼を喪失したのもやむを得ないなどとして、雇止めを有効と判断しています。
「弁護士西川暢春からのワンポイント解説」
始末書拒否に対して解雇や懲戒の処分をする場合、会社が始末書の提出を求めたことについて合理的な理由があったことが前提になります。
始末書の提出を求めること自体に合理的な理由がない場合は、始末書の提出が拒否されたからといって、解雇や懲戒を行うことは、不当解雇、不当懲戒になりますので注意してください。
過去の判例でも、軽微な作業上のミスや休暇申請手続のミスについて始末書や反省文の提出を執拗に求めたケースについて、このような企業の対応は違法であると判断した事例があります(東芝府中工場事件東京地方裁判所八王子支部判決平成2年2月1日)
6,まずは解雇ではなく合意による退職を目指す
前述の通り、会社の合理的な始末書提出要求に対して、提出を拒否して問題行動を続ける従業員については、解雇を有効と判断した事例が増えています。
ただし、会社のリスクを最小限にするためには、解雇は最後の手段ととらえ、まずは退職勧奨により、合意による退職を目指すことをおすすめします。
解雇してしまうと、後で不当解雇として訴えられるリスクがあり、その場合、万一敗訴すれば多額の金銭支払いを命じられます。
また、勝訴したとしても、長期間にわたり、裁判に費用や労力を割くことは企業経営にとってプラスではありません。まずは退職勧奨という形で、従業員に対して退職を促し、それでも合意に至らない場合に、最後の手段として解雇を検討するべきです。
なお、退職勧奨については以下の記事で詳しくご説明していますのでご参照ください。
また、退職勧奨で円満に解決するための具体的な手順がわかるおすすめ書籍(著者:弁護士西川暢春)も以下でご紹介しておきますので、こちらも参考にご覧ください。書籍の内容やあらすじ、目次紹介、読者の声、Amazonや楽天ブックスでの購入方法などをご案内しています。
7,咲くやこの花法律事務所の弁護士なら「こんなサポートができます!」
最後に咲くやこの花法律事務所における問題社員対応についての企業向けサポート内容をご説明したいと思います。
サポート内容は以下の通りです。
(1)問題社員の指導方法、対応方法に関するご相談 (2)弁護士による懲戒手続きの実施 (3)顧問弁護士サービスによる問題社員対応サポート以下で順番にご説明します。
(1)問題社員の指導方法、対応方法に関するご相談
咲くやこの花法律事務所には問題社員の指導方法や対応方法に精通した弁護士が多数在籍しています。
ご相談の際は、まず個別の事情を詳細にヒアリングしたうえで、事案ごとに、過去の事務所での対応経験も踏まえて、実効性のある対応策をご提案します。
始末書の提出を拒否する従業員など、問題社員の指導、対応にお悩みの企業経営者、管理者の方はご相談ください。
咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士による相談料
●初回相談料:30分5000円+税(顧問契約締結の場合は無料)
なお、問題社員対応全般については以下の記事でご説明していますのであわせてご参照ください。
(2)弁護士による懲戒処分手続きの実施
咲くやこの花法律事務所では、問題社員に対する懲戒処分手続きについてもサポートを行っています。
懲戒するべき事情があるかどうかの調査から、懲戒処分の言い渡しまでを弁護士が同席してサポートすることが可能です。
懲戒については、まず懲戒するべき事情があるかどうかの調査を正しい手順で行うことが必要です。調査には専門的なノウハウが必要であり、弁護士に依頼することがベストです。
また、懲戒処分の言い渡しの場面では、従業員がその場で不満を述べたり反論をしてきたりすることがあります。無用なトラブルを防止するためには、懲戒処分の言い渡しの場に専門家である弁護士も同席することが効果的です。
咲くやこの花法律事務所では、労務トラブルに強い弁護士が懲戒処分の言い渡しの場に同席し、会社側の立場で適切な応答をするなどして、懲戒処分の言い渡しをサポートしています。
懲戒するべき事情があるかどうかの調査や懲戒処分の言い渡しに不安があるときは、ぜひ咲くやこの花法律事務所のサポートサービスをご利用ください。
咲くやこの花法律事務所の問題社員対応に強い弁護士によるサポート費用
●初回相談料:30分5000円+税
●面談費用:時間や面談場所への距離に応じて、10万円~20万円+税程度
(3)顧問弁護士サービスによる問題社員対応サポート
咲くやこの花法律事務所では、問題社員の指導にお困りの企業を継続的にサポートするために、顧問弁護士サービスによるサポートも行っています。
顧問弁護士サービスによるサポートのメリット
指導方法や従業員対応についての疑問点をその都度電話やメールで弁護士に相談できる 始末書の提出を求める場面や、始末書の提出を拒否された場合などにいつでも弁護士に電話で相談できる問題社員の指導は継続的な取り組みが必要であり、弁護士にいつでも相談できる体制を作ることで、正しい対応を進めていくことが可能です。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの費用
●スタンダードプラン(月額顧問料5万円/相談時間制限なし)
契約前に担当弁護士との無料面談で相性をご確認いただくことができます(電話・テレビ電話でのご説明or来所面談) 来所していただかなくても、電話あるいはテレビ電話でお申込みいただけます。咲くやこの花法律事務所のその他の顧問弁護士プランの詳細や顧問弁護士サービスの実績については以下のページをご参照ください。
・【全国対応可】顧問弁護士サービス内容・顧問料・実績について詳しくはこちら
・大阪で実績豊富な顧問弁護士サービス(法律顧問の顧問契約)をお探しの企業様はこちら
8,「咲くやこの花法律事務所」の弁護士に問い合わせる方法
弁護士の相談を予約したい方は、以下の「電話番号(受付時間 9:00〜23:00)」にお電話いただくか、メールフォームによるお問い合わせも受付していますので、お気軽にお問い合わせ下さい。
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9,始末書拒否に関連するお役立ち情報も配信中(メルマガ&YouTube)
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記事作成弁護士:西川 暢春
記事更新日:2024年11月1日
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