奥の細道象潟
江山水陸の風光数を尽して、今象潟に方寸を責:<こうざんすいりくのふうこうかずをつくして、いまきさがたにほうすんをせむ>。象潟は、この時代、本文中にあるように松島と並び称される風光明媚の潟湖<せきこ>であった。しかし、文化元年(1804)6月4日の出羽大地震で隆起が起り現在のように陸地となってしまった。
方寸とは一寸四方の空間のことだが、転じて「こころ」・「胸中」を意味する。風光明媚の象潟を訪れたいと心に刻んできたが,今こうしてそこに立つことができた。気負いたった芭蕉の心が伝わってくる書き出し。
汐風 真砂を吹上、雨朦朧として鳥海の山かくる:<しおかぜまさごをふきあげ、あめもうろうとしてちょうかいのやまかくる>と読む。鳥海山は、山形・秋田県境にある標高2,237mの名 峰 。
いさごをふみて其際十里:<・・そのきわじゅうり>と読む。「いさご」は砂子で細かな砂粒。海辺の砂浜を歩くこと、酒田から象潟までおよそ40kmあるという。この間は、直線距離では33km。
雨も又奇なり:蘇東坡の『西湖』の詩から採った。
雨後の晴色又頼母敷と:<うごのせいしょくまたたのもしきと>と読む。雨上がりの晴れた景色もまたすばらしいであろうと、の意。
蜑の苫屋:<あまのとまや>と読む。能因の歌「世の中はかくても経けり象潟の海士の苫屋をわが宿にして」から引用
天能霽て:<てんよくはれて>と読む。よい天気になって、の意。
先能因島に舟をよせて、三年幽居の跡をとぶらひ:<まずのういんじまにふねをよせて、さんねんゆうきょのあとをとぶらい>と読む。能因法師がこの島に三年間隠れ住んだと伝えられている。
江上に御陵あり。神功皇 宮の御墓:<こうしょうにみささぎあり。じんぐうこうぐうのおんはか>と読む。『継尾集』によれば、神功皇后が百済遠征の帰途、ここ象潟に漂着し死亡したと伝えられている。もとより荒唐無稽な神話に過ぎないが。
干満珠寺:<かんまんじゅじ>と読む。禅宗の寺。慈覚大師の創建と伝えられる。蚶満寺 <かんまんじ>。
「花の上こぐ」とよまれし桜の老木:西行の歌「象潟の桜は波に埋れて花の上漕ぐ海士の釣り舟」を引用 。
むやむやの関:不明。この地に昔鬼神が出没し、それが出るときにはむやむやという名の鳥がむやむやと鳴いたという。
秋田:現秋田市。当時、佐竹氏20万5千8百石の城下町。
象潟はうらむがごとし:<うらむ>「憾む」は悲しむこと。
「象潟や料理何食う神祭」象潟汐越の熊野権現の社の祭では、魚を食うことを禁じているという。魚が食えないというと何を食えばよいのだろうか?。
「蜑の家や戸板を敷きて夕涼み」日本海の凪は暑い。人々は夕涼みに戸板を浜辺に引っ張り出してきて、それに腰かけて暑さを凌ぐ。
「波こえぬ契ありてやみさごの巣」ミサゴの夫婦はこんな波がかかりそうな岩場に巣をこしらえて子育てをしているが、高波もここまでは来ないという約束でも有ってのことだろうか?
低耳:<ていじ>。宮部弥三郎という岐阜の商人。奥の細道のうち北陸道の旅のアドバイスをしたといわれている。
みさご:<鶚>。トビ程の大きさのワシタカ目の鳥。ウオタカ、スドリともいう。海辺に生息して魚類を食す。夫婦仲の良いものの象徴とされている。 米軍の固定翼垂直離着陸機(MV22)の愛称「オスプレイ」はこのミサゴのこと。
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